医師、看護、介護業界の転職事情、成功のコツ

「医師の働き方改革」施行の前に考えておきたい、医師の労働条件改善のために必要なこと

厚労省は2019年、「医師の働き方改革」として、「医師の時間外労働の上限は原則として年間960時間以下とする」という方針を固めました。2024年4月から施行予定であるこの医師の働き方改革。医師の健康的を守るための施策ですが、一方で日本医師会は、この方針の見送り、もしくは緩和を求めるよう提言を出しました。

医療現場では何が起こっているか

大学病院や救急指定病院、開業医、中小規模のクリニックなどで働く現役医師を対象にしたあるアンケートによると、約6割の医師が「過重労働」だと感じているとの結果が出ました。さらに、約3割の医師が十分な睡眠をとれておらず、慢性的な睡眠不足であるという結果となりました。

厚労省の2017年の調査では、勤務医の1割が年間1920時間を超える徐幹外労働をしているということがわかりました。これは、「脳・心臓疾患の労災認定基準における時間外労働の水準」の2倍となる時間です。さらに、勤務医の1.6%は、同水準の3倍となる年間2880時間を超える時間外労働をしているという、「超過重労働」にあることがわかりました。

このように医師の労働時間は、ほかの職種と比べても極端に長い場合が多く、患者の健康を守るはずの医師自身の健康が守られていない状況であると言えます。

「医師の働き方改革」施行により起こりうる問題

上記でお伝えしたように、多くの医師は時間外労働時間の速やかな改善が必要な状況にあると言えます。しかしながら、日本医師会が取りまとめ公表した提言では、「医師の働き方改革」施行により、特に救急医療に対応する医院において、以下のような問題が起こりうると指摘しています。

・救急対応をする医師と救急対応をしない医師とに分かれ、当直医師間で働き方に格差が生じる
・現在は数名の医師が数時間ごとに交代で当直に当たるなどの体制を組んでいるが、1人の医師が長時間の対応を余儀なくされるようになり、救急当直担当医師の負担が重くなる
・救急当直担当医師の月間の当直回数が増え、平日の超過勤務ができなくなる
・オンコール体制の強化など、別の負担が他の医師に発生する

また、大学病院においては、スタッフの教育や研究に費やす時間を短縮せざるを得ず、将来的な医療水準の低下につながるという見通しもされています。

2024年を迎える前に、見直すべきこととは

医師の時間外労働時間の見直しは、勤務医の負担を顧みると、必達事項であると言えます。しかしながら、勤務医の多くは労働時間以上に「業務量の多さ、幅広さ」や「事務作業など専門領域以外の業務の多さ」に対し、負担を感じているというデータもあります。

病院の規模に関わらず、勤務医のほとんどが、事務作業や運営に関する業務など、医療分野以外の業務も兼任し行っています。そのような業務が診療や医学研究といった医師本来の業務に割く時間を圧迫し、結果として医師の業務量、労働時間を増やしていると言えるのです。

実際の医療現場に則して考えると、時間外労働時間の見直しのみでは、根本的な解決は難しいと言えるでしょう。もちろん医師の健康を脅かす長時間労働は避けなければなりません。しかしながら、労働時間のみに着目し改善を試みるとなると、患者にとって必要な医療が提供できなくなる恐れがあります。また経験の浅い医師が十分な教育を受けられないまま業務に駆り出され、患者の健康を守り切れないというリスクも考えられるでしょう。

医師の働き方にも、柔軟性と効率化が必要

医師と言う職種において、何を持って「負担である」と感じるかは、人により異なります。一様に労働時間などをルール化するのではなく、業務の効率化や、働き方の選択肢が多い柔軟性こそが、医師の労働条件として確保されるべきと言えるでしょう。

医療現場で発生する業務は、患者や病院内の状況、人員配置などにより、すぐ様見直すということは難しい場合が多いです。現状の改善が困難だと感じた場合は、医師専門の転職支援サービスなどを利用し、適した環境へ移るという方法も解決の手段として有効です。

そのほか、経営者が行うべき対応策としては、事務作業などを担当する人員を増やし、医師が診療、治療行為に専念できるようにすることが望ましいです。

医師のリソースには限りがあります。高齢化が進む中、医療ニーズはさらに高まっていくと予想されます。また、コロナウイルス感染拡大により医療現場が切迫したように、緊急性のある対応が突破することもあります。限られた医師のリソースをどう活かしきるかは、医療現場全体で考えていかなければならない問題です。

医師の労働環境改善のために大切なこと

医療現場において、人材の確保や体制の見直しなど、経営側が改善を進めなければならない点は多くあります。一方で、業務内容の振り分けや経験の浅い医師への教育の仕方など、医師自身が進めていくべき改善点もあるかと思います。医師自身が働き方を考え直していくことや、マネジメント能力の向上を目指すことなどが、今後一層求められていきそうです。

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